関西にあるA児童自立支援施設が、観光バスをチャーターし「退園生の応援を」と、後輩である学園生たちと、そこで共に暮らす職員さんたちが、京都へやって来ました。全国高校駅伝大会です。
私の勤めていた県の施設ではないので、私は大会に出場したK君の事を直接は知りませんが・・・
彼は、A学園に入所した中学生時代、それほど運動も得意ではなく、走る事も好きではなかったと聞いています。
環境的な要因、本人の起こした事情、いろいろとあった中で入所しなければならなくなった児童自立支援施設でした。そこで、全員参加のクラブ活動の一環として、仕方なくやり始めた駅伝。けれど、毎日向き合っていくうちにどんどん走れるようになり、ついには近畿の施設大会で新記録を出す快挙。そしてそして、高校進学は陸上で。離れた場所での新しい高校生活、新しい人生が始まったのでした。
児童自立支援施設でのスポーツは、子どもたちに強制参加が原則です。もちろん、「個々の状況に合わせて」ですが、今まで苦手な事や嫌な事から逃げることの多かった子どもたちに、スポーツを通して学んでほしいことがたくさんあるので、ある程度の負荷をかけます。もちろん、それぞれの子どもたちの様子を見ながら、職員も一緒に動きます。けれども、そのことが、今の時代では「本人の意思を尊重せずに強要している」ととらえられがちで、ともすれば虐待しているかのように誤解を生むこともあるのが現状です。
先日、野球のイチローさんが「厳しく教えるのが難しい時代だから、自分自身が自分に厳しくなって欲しい」と、子どもたちに話されているニュースを見ました。まさに。と、思いました。
子どもたちが自分に厳しくなることは相当に難しい事だと思いますが、自分からやってみようと、小さな目標ややる気を持てるように援助してやるのが大人の役割だと思います。
A学園は在園している子どもたちに、この、全国放送されるような大きな舞台で走る、カッコイイ先輩の姿を直接見せました。きっと、今まで嫌々走っている子どもたちも、ちょっと頑張ってみようかなと思うに違いないと思うのです。職員が厳しく教えるよりも、この、先輩の雄姿です!
後輩たちや、寮長寮母、先生方の「頑張れ!」の大声援に、彼は走るスピードを上げました。
テレビで応援することも出来る。駅伝の応援は目の前を走る一瞬しかチャンスが無い。けれども、こうやってわざわざ京都までやって来て応援する。その一瞬だけれど、応援の声が聞こえたK君はそれに応える・・・
素敵で羨ましい関係を作っているA学園の先生方に拍手です。
大会出場した彼には、これからの人生、この「頑張れ!」の声援がきっといつも聞こえるのではないかと思います。
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